2026年7月15日、パシフィコ横浜で開催された第81回日本消化器外科学会総会にて、当社共催のランチョンセミナーを開催しました。テーマは「熟練医の脳をデジタル化する ― AIが若手外科医を最短ルートで『匠』へと導く未来」。
外科領域におけるAI活用について行われた講演と活発なディスカッションの様子をご紹介します。
座長は東京女子医科大学の本田五郎先生。演者は金沢大学の石林健一先生と、慶應義塾大学の阿部雄太先生のお二方です。

■ 卒後8年目の外科医の視点
登壇された石林先生は、卒後8年目の外科医です。学会のランチョンセミナーで、8年目の先生が講師として立たれることは稀なことかもしれません。
この度は、AIとともにキャリアを積んでいく世代がAIをどう受け止めているのか。その世代自身の言葉で語っていただきたいとディリーバからお願い申し上げ、ご登壇が実現しました。
石林先生のお話は、「若手外科医がAIとどう付き合っていくか」という当事者の視点から始まりました。
印象的だったのは、AIが手術のための特別な技術としてだけ語られなかったことです。仕事にも日常にも入り込んで、公私ともに毎日を少し楽にしてくれる道具といった距離感で語られていました。
AIが電気や水道のように、意識せずに使っている基盤へと変わっていく前提に立ったとき、議論すべきは「使うか否か」ではなく「どう使いこなすか」に移ります。
AIに触れる機会がまだ多くない臨床現場も少なくないなか、すでにAIが当たり前にある地平からお話しをいただくことができました。
■ 熟練の技を「見て盗んで覚える」から「見ればわかる」へ
続く阿部先生のご講演は、視点が入れ替わります。
石林先生が「これからの世代がAIとどう付き合うか」を語られたのに対して、阿部先生が示されたのは、すでに熟練の域にある術者の手元で何が起きるのかという視点でした。
AIによる支援がある場合とない場合の術野画像を並べて提示し、経験を積んだ外科医でも判断に迷う場面で、何が見えるようになるかを紹介いただきました。
ここで語られたのは、熟練医が経験の中で身につけてきた“見えている世界”が、他者に可視化されるようになるということ。
教育で言えば、これまで若手医師が「見て盗んで覚える」しかなかったものが「見れば分かる」ものへと変わりうる。
外科医の不足や技術継承の難しさは、日本の医療の構造的課題です。熟練の技が個人の中に閉じたまま失われていくのではなく、共有可能なかたちで受け渡されていく道筋がある。そうしたご講演でした。
■ 「AIは外科医に取って代わるのか」
若手の視点から入り、熟練の術者の手元に渡ったご講演の流れを受け、座長の本田先生は率直に問いかけられました。
「外科医は不要になっていくのか。いずれAIが取って代わるのではないか。」
本田先生に正面からこの問いを議論のテーブルに載せていただいたことで、セッションは対話の場になりました。
様々な年代の先生方により議論が交わされたこと自体が、セッションのいちばんの収穫でした。
ご登壇いただいた先生方、ご聴講くださった皆さまに、あらためて御礼申し上げます。